さすがに 17、8歳ともなれば、
自分がそうと意識せずとも、
周囲が先んじて、
大人やそれへ準じた存在だと扱ってくださるもので。
なので
打ち込んでいるアメフトで、
なかなかの成長ぶりを発揮しただけで。
無名校を率いての、
勝ち星 積み重ねている期待の新星と、
頼んでもないのに持ち上げてくれるわ。
ずんと年上のはずな記者さんたちも、
対等な相手と見なした口利きしてくれるわ。
そうさ、高校生なんだもの、
もう大人も同然だよなぁ。
そんな俺様なんだもの。
間違っても…味な眼差しを向けたのを、
腹でも減ったかなんてつや消しなことを言うような、
野暮天を見初めたつもりはなかったからさ。
練習終えたの迎えに来てくれたそのまんま、
相変わらず堅くてごつい二の腕を抱き込んで。
んん?って
上目遣いに意味深なお顔を向けたれば。
そっちは上からの斜に構えてたお顔をやわらげて、
大きな手で顎先つかまえて、
暖かいキスをくれるんだ。
もういいって言っても許さないほど、
口元や頬っぺや耳まですべってっての、
ぺろぺろぺろって…………
…………………ぺろぺろぺろ?
「〜〜〜にゃあぁ。こらキング、やめろって。」
「わふっ!」
目を開けて一番最初に飛び込んで来たのが、
悪戯っ子の毛もじゃなお顔ってどうよ。
濡れた鼻先、こっちのお鼻へ擦りつけて、
くんくん・きゅ〜んって甘えかかるシェルティくんに、
寝起きを襲われた子悪魔さんが。
みぎゃあ〜〜〜っと大声立てたので、
「…お、やっと起きたか。」
坊やが寝転んでたベッドの対面。
クロゼットの前に、見慣れた長身が立っており。
フリル・ド・リザードのユニフォームを、
スポーツバッグに詰めてる葉柱だったので。
ああなんだ、まだオレって小学生じゃんかと再確認。
う〜んと・うんと、
記憶がちょこっと飛んでるけれど、
しっかと抱きしめてたのが特別改造したマシンガンだってことは、だ。
「…豆まきのあと、オレ、寝てた?」
「まぁな。」
ちなみに、相変わらず、
坊やの特製マシンガンを使っての豆まきなので、
追われる側はゴーグル必帯。
俺らが鬼だってコトっすか?と、
新人組が泣きついて来ても、そこは笑って誤魔化して。
グラウンド全部を使っての“鬼ごっこ”は、
途中からメグが自転車という足を貸すので、
ちょいとキツめのランニングのようなもの。
そんな騒ぎに始まり、
その後も気を緩めれば、坊やの叱咤と銃撃が飛んで来る練習後。
はしゃいだまんまの子悪魔さんを、連れ帰ってくれた葉柱だったが。
重たいマシンガンを抱えっ放しだった坊やのほうでも疲れたか、
お兄さんのお部屋のベッドにころりと転がったまんま、
遅めの昼寝よろしく、しばしの間、寝こけてしまっていたらしい。
起こしに来ただけだったものか、
ヨウイチ坊やが身を起こしてしまうと、
シェルティのキングも大人しくなってしまい。
いい子でお座りと姿勢を正し、
ただし尻尾はぶんぶん振っての、
構って構ってと絵に描いたような態度なのが、
いっそ可笑しくてたまらないのだけれど。
「うにゃ〜〜〜。」
よほどに深く寝入っていたか、まだちょっと瞼が上がらなくって。
着替えを詰め替えていたお兄さんが、
広いスタンスにて、ベッドの傍までやって来たの、
気配ででも拾えなかった小さな悪魔様へ、
「何か夢とか見てたのか?」
そうと訊きながら、
わさりと、ベッドに腰掛けたその弾み。
ふんわり柔らかなマットや布団が、
沈んだその分、座り込んでた坊やをゆさりと揺さぶって。
葉柱の側へ、こてんと転ばす他愛なさ。
キングの毛並みと同じよに、
幼いからか細い質の髪なのが、
淡い色合いと相俟って、ますますのこと、
お人形さんみたいな印象を、強めておいでではあるものの、
「で、その夢の中で俺は何をやらかしてたのかな?」
「…っ☆」
何か寝言でも言わない限り、そんなことは訊かないよな。
いやいや、これってカマかけてるだけなのかも?
最近のルイは、妙に鋭い時があっからな。
でもでも、たとえそうだとしても、そっから何を言う気だろうか。
「 〜〜〜〜。////////」
こっちは寝起きなんだもの、分が悪いと。
ほのかに色づき始めた白い頬を膨らませ、
堅い懐ろに凭れたまんま、
小癪なお兄さんを見上げた坊やだったそうでございます。
〜Fine〜 11.02.06.
*ちょっと出遅れ、子悪魔さんの節分…後日談でございます。
ここんところ、
葉柱さんが盛り返すことも多かりしな二人ですが、
何か大きなどんでん返しがありそうで、
そこんところが怖い怖い。(苦笑)
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